Classical Armenian · Grabar

古典アルメニア語入門

Գրաբար

古典アルメニア語「グラバル(Գրաբար=書き言葉)」は、5世紀のアルメニア文字創製とともに生まれた文語です。 聖書翻訳をはじめとする黄金時代の文学を生み、今もアルメニア使徒教会の典礼で用いられています。 現代アルメニア語(東・西)は、すべてこの言語から枝分かれしました。

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グラバルとはWhat is Grabar

グラバル(Գրաբար)は「書くための言葉」を意味し、 405年頃にメスロプ・マシュトツがアルメニア文字を創製した直後から、 文学・宗教・学術の言語として発展しました。

最初の大事業は聖書のアルメニア語訳でした。その見事さから、この訳は後に 「翻訳の女王(Թագուհի թարգմանութեանց)」と称えられます。 5世紀は歴史書・神学書が次々と著された黄金時代(Ոսկեդար)と呼ばれています。

グラバルは日常の話し言葉としては使われなくなりましたが、 アルメニア使徒教会の典礼言語として現在も生きており、「死語」とは言い切れない特別な存在です。 ラテン語がカトリック教会で果たす役割に似ています。

歴史の流れTimeline

現代語との違いvs Modern Armenian

文字は現代語と共通ですが、文法は現代語よりも複雑で、古い特徴を多く残しています。主な違いを挙げます。

格が多い

名詞が7つの格(下表)で変化し、文中の役割を語尾で示します。

自由な語順

格変化が明確なため、語順は現代語より自由です。

接頭辞 զ-

直接目的語に զ を付ける特徴的な用法があります。

総合的な動詞

現代語のような助動詞の迂言形ではなく、語尾で時制・人称を総合的に表します。

例えば現代語の եւ(そして)や語彙の多くはグラバル由来です。 現代アルメニア語を学ぶと、グラバルの単語の多くに見覚えが出てきます。

名詞の7つの格Seven Cases

グラバルの名詞は、以下の7格に変化します(現代東アルメニア語は基本的にこの体系を簡略化して受け継いでいます)。

アルメニア語名ラテン名主な用法
主格Ուղղականnominative主語
属格Սեռականgenitive所有「〜の」
与格Տրականdative間接目的「〜に」
対格Հայցականaccusative直接目的「〜を」
奪格Բացառականablative起点「〜から」
具格Գործիականinstrumental手段「〜で」
位格Ներգոյականlocative場所「〜において」
表の格の名前(Ուղղական など)は、現代アルメニア語の文法でも同じ用語が使われます。 本サイトの文法ページで現代語の格変化も確認できます。

最初に訳された言葉The First Sentence

伝承によれば、マシュトツが新しい文字で最初に書き記したのは、 旧約聖書「箴言」の一節でした。学びの尊さを説くこの句が選ばれたことは、象徴的だと言われています。

箴言 1:2(マシュトツが最初に訳したとされる句)
Ճանաչել զիմաստութիւն եւ զխրատ, իմանալ զբանս հանճարոյ
Chanach'el zimastut'iwn ew zkhrat, imanal zbans hancharoy
知恵と訓戒とを知り、悟りの言葉をわきまえるため
ラテン文字転写は古典語の伝統的な読みに基づく目安です。զ-(zi-, z-)は上で触れた 直接目的語を示す接頭辞で、グラバル特有の文法です。

学びの位置づけHow to Approach

グラバルは主に古典文献を読むため、または教会典礼を理解するために学ばれます。 会話のためではなく「読むための言語」である点が、現代語学習と大きく異なります。

現代アルメニア語(東または西)をある程度学んでからグラバルに進むと、 共通する語彙や文字のおかげで理解しやすくなります。まずは 現代アルメニア語の基礎から始めるのがおすすめです。 基礎文法の枠組みは古典アルメニア語の文法ページにまとめています。

このページは古典アルメニア語の入門的な紹介です。 本格的に読解を目指す場合は、専門の文法書(Robert Thomson の古典アルメニア語文法などが英語圏で標準的)や、 教会・大学の講座で体系的に学ぶことをおすすめします。