Classical Armenian Grammar · Գրաբար

古典アルメニア語の文法

グラバルの基礎文法を、標準的教科書(R. W. Thomson『An Introduction to Classical Armenian』)の 枠組みに基づいて紹介します。名詞の格変化・動詞の活用・代名詞など、古典文献を読むための土台です。

リンクをコピーしました

グラバル文法の特徴Overview

グラバルの文法は現代アルメニア語より古い姿を保っています。読解の前提となる特徴は次の4点です。

総合的な活用

動詞は語幹+語尾で人称・時制を表します。現代東アルメニア語の「分詞+be動詞」方式とは異なります。

豊かな格変化

名詞は7格に変化し、変化のパターン(a変化・i変化・o変化など)が語ごとに決まっています。

対格の զ-

定の直接目的語には接頭辞 զ が付きます(զգիրս「その本を」)。グラバル読解の最重要ポイントです。

指示接尾辞 -ս/-դ/-ն

名詞に付く3系列の接尾辞が「私の側の/あなたの側の/あの・例の」を区別します。

名詞の格変化Declension

名詞は変化クラスごとに語尾が異なります。代表的な4クラスを単数・複数で示します。 奪格・位格には前置詞 ի(母音の前では յ-)を伴う形で示しています。

a変化 — ազգ(民族・国民)

単数複数
主格ազգազգք
対格զազգզազգս
属格・与格ազգիազգաց
奪格յազգէյազգաց
具格ազգաւազգաւք
位格յազգիյազգս

i変化 — սիրտ(心)

単数複数
主格սիրտսիրտք
対格զսիրտզսիրտս
属格・与格սրտիսրտից
奪格ի սրտէի սրտից
具格սրտիւսրտիւք
位格ի սրտիի սիրտս

o変化 — գործ(仕事・業)

単数複数
主格գործգործք
対格զգործզգործս
属格・与格գործոյգործոց
奪格ի գործոյի գործոց
具格գործովգործովք
位格ի գործիի գործս

親族名詞(r変化) — հայր(父)

単数複数
主格հայրհարք
対格զհայրզհարս
属格・与格հօրհարց
奪格ի հօրէի հարց
具格հարբհարբք
属格と与格は多くのクラスで同形です。親族名詞(հայր 父、մայր 母、եղբայր 兄弟)は 属格 հօրմօրեղբօր のように語根が縮む特別な変化をします。

指示接尾辞と զ-Articles & Object Marker

グラバルには3系列の指示接尾辞があり、話し手からの距離・関係を表します。

接尾辞意味
մարդսこの人(私の側・話し手の領域)
մարդդその人(あなたの側・聞き手の領域)
մարդնあの人・その人(第三者/既知の定)

また、定の直接目的語には接頭辞 զ- を付けます。 տեսանեմ զմարդն(私はその人を見る)のように、「〜を」が明確になります。 現代語にはない、グラバル特有の文法です。

人称代名詞Pronouns

主要な格の形を一覧にします(主格・属格・与格・対格・奪格)。

意味主格属格与格対格奪格
եսիմինձզիսյինէն
あなたդուքոքեզզքեզի քէն
彼・彼女նանորանմազնաի նմանէ
私たちմեքմերմեզզմեզի մէնջ
あなたたちդուքձերձեզզձեզի ձէնջ
彼らնոքանոցանոցազնոսաի նոցանէ
「私たち」は մեք(現代語 մենք と異なる)、「彼ら」は նոքա です。 属格 իմքոմերձեր は現代語にそのまま受け継がれています。

動詞の活用 — սիրել(愛する)Conjugation

-ե- 幹動詞 սիրել を例に、主要な時制・法を示します。 すべて語幹+語尾の総合形で、助動詞を使いません。

直説法・現在

「〜する・〜している」。語幹+人称語尾で総合的に活用します(現代語のような分詞+be動詞ではありません)。

եսսիրեմ
դուսիրես
նասիրէ
մեքսիրեմք
դուքսիրէք
նոքասիրեն

直説法・未完了過去

「〜していた」。過去の継続・反復。

եսսիրէի
դուսիրէիր
նասիրէր
մեքսիրէաք
դուքսիրէիք
նոքասիրէին

直説法・アオリスト

「〜した」。過去の完結した動作。語幹に -եց- が現れます。

եսսիրեցի
դուսիրեցեր
նասիրեաց
մեքսիրեցաք
դուքսիրեցէք
նոքասիրեցին

接続法(アオリスト接続法)

願望・可能性、そして未来。グラバルには専用の未来形がなく、この形が未来を表します。「〜するだろう・〜しよう」。

եսսիրեցից
դուսիրեսցես
նասիրեսցէ
մեքսիրեսցուք
դուքսիրեսջիք
նոքասիրեսցեն

命令法

2人称単数սիրեա՛
2人称複数սիրեցէ՛ք
禁止(単数)մի՛ սիրեր
禁止(複数)մի՛ սիրէք
強変化動詞では、アオリスト3人称単数に加音 ե- が現れます: բերել(運ぶ)→ アオリスト3単 եբեր(彼は運んだ)。 ギリシア語の加音に似た、印欧語の古い特徴の名残です。

学びを進めるにはNext Steps

このページは読解入門のための骨格です。ここから先は、実際のテキスト (聖書のアルメニア語訳、5世紀の歴史家たち)を少しずつ読むのが王道です。

⚠️ 活用表は標準教科書の枠組みに基づいて作成し、複数の形を照合しましたが、 本格的な読解・引用の際は必ず原典の文法書で確認してください。 グラバルには方言・時代による揺れもあります。