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このサイトについて

日本語でアルメニア語を学べる場所が、ほとんどありませんでした。 無いのなら作ろう、と思って始めたのがこのサイトです。 方針と、監修の体制と、限界について書いておきます。

アルメニア語との出会いHow It Started

2009年、ベルギーの大学に留学していたときのことです。 現地で、アルメニア系ベルギー人の学生と知り合いました。

アルメニアという国の名前は、それまでも知ってはいました。 高校の世界史で、世界で最初にキリスト教を国教とした国として 習ったからです。けれどもそれは、教科書の一行として覚えていただけでした。 その一行が、目の前にいる同年代の学生と結びついた。 歴史上の名前だったものが、生きている人のものになった瞬間でした。

さっそくベルギーでアルメニア語の教科書を買い、独学を始めました。 39文字の見慣れない字を、ひとつずつ覚えていくところからです。

同じ2009年のうちに、イスタンブルのアルメニア教会を訪ねました。 天使の姿が彫られた石の壁。アルメニア文字の刻まれた門。 観光地として整えられたものではない、 そこで信仰が続いてきた場所の荘厳さがありました。 教科書で覚えはじめた文字が、石に刻まれて目の前にある。 文字が生活の中にあるということを、はじめて実感しました。

2013年には、イスラエルに留学しました。 エルサレムのアルメニア使徒教会で、門番の方に、 覚えたばかりの挨拶をアルメニア語で言ってみたのです。

すると、アルメニア語で返事が返ってきました。 通じた、というただそれだけのことが、いまでも忘れられません。 本で覚えた文字と音が、はじめて人とのやりとりになった瞬間でした。 このサイトを作っている理由をひとつだけ挙げるなら、 この経験を誰かに渡したい、ということに尽きます。

その後もイスラエルとパレスチナ自治区で、多くのアルメニア人に会い、 アルメニア人にゆかりのある教会や施設を訪ねました。 アルメニア語が、アルメニア共和国の中だけのことばではないこと。 各地に根を下ろした人々によって、いまも使われ続けていること。 そのことを、資料ではなく実際に会った人たちから知りました。 ディアスポラのページは、 このときの経験がもとになっています。

なぜ作っているかWhy

アルメニア語は、話者が数百万人いて、 1600年以上にわたって書き継がれてきた文献を持つ言語です。 それなのに、日本語で読める体系的な資料がほとんどありません。 学ぼうとすれば、英語かロシア語を経由することになります。

文字からして独自です。5世紀にメスロプ・マシュトツが作った39文字は、 ほかのどの文字体系とも似ていません。 その見た目の壁の向こうに、豊かな文法と語彙の世界があるのに、 日本語話者にとっては入口そのものが用意されていなかった

調べるほどに、断片的な情報は見つかるのに、 それらをつなぐものが無いことが分かってきました。 文字の一覧はある。単語のリストもある。 けれども「はじめから順に読める形」になっているものが無い。 それなら自分で作るしかない、というのがこのサイトの出発点です。

込めた思いWhat I Hope For

このサイトで大事にしているのは、 アルメニア語を「珍しいもの」として扱わないことです。

少数言語や非西欧の言語は、しばしば 「エキゾチックな対象」や「消えゆくもの」として語られます。 けれども、それはいま使っている人にとっては 毎日の生活のことばです。 買い物をし、冗談を言い、けんかをし、子どもに話しかけることばです。 珍しいから紹介するのではなく、学べるから学べるように書く。 その姿勢を保ちたいと思っています。

もうひとつは、正確さを手放さないことです。 情報が少ない分野では、誤った記述でも「無いよりまし」と受け入れられがちです。 でも、最初に触れた資料が間違っていれば、 その誤りはその人の中に長く残ります。 少なくとも、こちらが確かめられる範囲では確かめる。 確かめられていないことは、確かめていないと書く。

このサイトを見て、アルメニア語を始める人が 年に何人かでもいれば、それで十分だと思っています。 その何人かが、辞書やアプリを手に取り、 いつかアルメニアの人と直接ことばを交わす。 そこまでの最初の一歩を、日本語で用意しておきたい。 それがこのサイトの目的です。

監修Native Speaker Review

掲載しているアルメニア語は、母語話者の監修を受けています。

Elen Davtyan エレン・ダヴティヤン さん
東アルメニア語母語話者/アルメニア共和国エレバン在住

単語・例文・フレーズのすべてについて、 ネイティブスピーカーとして自然な表現になっているかを ダブルチェックしていただいています。 辞書のうえで正しいことと、実際にそう言うかどうかは別の問題です。 その差を埋められるのは、その言語で育った人だけです。

見ていただいていることなぜ資料だけでは足りないか
語感・ていねいさの度合い 辞書には載らない。場面ごとの自然さは話者にしか分からない
書きことばと話しことばの差 教科書の形が日常会話でそのまま使われるとはかぎらない
いま実際に使われるか 語形は正しくても、古い言い方になっている場合がある

あわせて、iOSアプリ「東アルメニア語辞書」に収録している発音も、 すべて Elen さんに録音していただきました。 見出し語の選び方や表現の自然さについても、 多くの助言をいただいています。

エレバンにお住まいの方に見ていただいていることには、 もうひとつ意味があります。 アルメニア語には東西の変種があり、地域による差もあります。 現地でいま使われている東アルメニア語を基準に 確認していただける、ということです。

正確さについてOn Accuracy

監修を受けているとはいえ、 このサイトを書いているのは言語学の専門家ではなく、一人の学習者です。 構成や説明のしかたには、こちらの理解不足からくる誤りが残っている可能性があります。

誤りを見つけられた方は、ぜひお問い合わせから教えてください。 指摘は歓迎します。直したうえで、なぜ間違えていたかも書き残すようにしています。

内容の性質上、試験や業務での利用は想定していません。 正確さが要求される場面では、辞書や専門家に当たってください。

姉妹サイトSister Site

同じ考え方で、中央アジアで話される タジク語のガイドも作っています。 系統としては遠い2つの言語ですが、 どちらも語順が日本語に近く、名詞に性がありません。 「日本語話者のための入口を用意する」という目的は共通しています。

運営About the Author

ヨンホ・セビヨルンが個人で作っています。 アルメニア語の専門家ではなく、学習者として書いているという立場です。

連絡はお問い合わせからお願いします。 内容についての指摘、掲載してほしい項目の要望、いずれも読んでいます。